研究概要 |
エリート算数・数学教員を養成するために,ドイツのカールスルーエ教育大学とタイのラチャパット地域総合大学アユタヤ校,玉川大学,京都教育大学のそれぞれ大学生・大学院生によるTV会議を使った遠隔協同ゼミナールが実施された。4月~7月では,関数教育をテーマに相手国のカリキュラムを分析した内容で発表しあった。日本からは,小学校と中学校での関数の授業風景のビデオを交えて,改良された関数教育も発表された。10月~2月では,ドイツと京都で幾何教育をテーマに実施された。協同ゼミナールを重ねることで,違和感が無くなり自国での通常のゼミナールのように実施できるようになることが分かった。また,TV会議の設置やゼミナールの準備・進行を学生だけで出来るようになるなど,学生のICT活用能力やプレゼンテーション・コミュニケーション能力の向上が認められた。さらに,テーマを関数や幾何に絞って比較研究を行うことで,各国での数学指導の具体的特徴がわかり,学生にとって新たな教育内容開発のヒントを得られることも確かめられた。 協同ゼミナールを教員養成カリキュラムの中で実施するには,大学3年生から準備の手伝いや参観を行いながら協同ゼミナールについて知ることから始まり,4年生では,自国で行っている通常のゼミナールでの研究内容をまとめて発表する。さらに,大学院では,研究成果を生かしたより深い内容となる討議を目指すと良いことが示唆される。一連の実験から,現行の教員養成カリキュラム内においても,TV会議を恒常的に利用してエリート教員の養成が可能であることが確かめられた。 研究の成果は,数学教育学会やドイツ数学教育学会(GDM)で報告し,さらに,玉川大学教育学部紀要『論叢』に掲載した。
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