最新の知識を身につけた教師を育てるために、マイクロスケール化学実験に重点を置いた教材を開発することが本研究の大きな目的である。また、先国ばかりでなく発展上もめたではマイクロスケール化学実験が導入され、化学教育が大きく姿を変えている。一方、わが国の化学実験教育は伝統的なやり方を続けており、現状を変えるための努力もあまり払われていない。上に述べた本研究の目的を達成するための研究を行い、本年度は次のような研究成果をあげることができた。 1 マイクロスケール酸・塩基滴定の改善 1mLのマイクロビュレットの改良を行い、使い勝手の良いビュレットを開発することができた。改良の鍵となったのは、メスピペットとプラスチックコックの接続に熱収縮チューブを便用したことである。 2 マイクロスケールで行うイオン交換クロマトグラフィー用の教材開発 本研究者は以前EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)を単座で配位したペンタアンミンコバルト(III)錯体(渦塩素酸塩)を合成した。過塩素酸塩は爆発を起こす可能性があるため、上記錯体の臭化物塩の合成を行った。得られた錯体(以下単座EDTA錯体と呼ぶ)は錯体でありながら、EDTAの配位子としての配位能力をほとんど失っていない。すなわち、この錯体はいわば陽イオン性のEDTA配位子とみなすことができ、陽イオン交換体上で錯形成、錯解離などの実験を行うことが可能になった。このため、溶液内における金属イオンと配位子の反応を観察できる絶好の素材を得たことになる。単座EDTA錯体自体がクロマトカラム内で興味ある挙動を示すことを見出しているが、この錯体と各種金属イオンとの反応は多彩なクロマト実験教材を提供してくれることが分かった。
|