昨年度に引き続きわが国の化学教育で著しく立ち遅れているマイクロスケール化学実験用教材の開発に重点をおいて研究を進めた。 1.研究EDTAを単座で配位したペンタアンミンコバルト(III)錯体を使った各種金属イオンとのクロマトカラム上での錯形成・錯解離反応の詳細な検討を行なった。その結果カラム上で溶離液のpH変化により溶離速度の大きな変化を見せる系や錯形成に伴って大きな色の変化を見せる系など、実験者の強い興味を喚起する実験教材の開発を行なうことができた。通常のクロマトグラフィー実験を短時間で実行することは困難であるが、マイクロスケールカラムクロマトグラフィーは短時間で実験を遂行することができる。今回、新たに簡単なサクションをカラムと組み合わせることにより、実験時間のさらに大幅な短縮を達成することができた。これらの成果は4回にわたって化学に関する国際会議において発表(招待講演:3回)した。 2.研究成果の授業への適用放送大学の各地にある学習センター(多摩、宮城、佐賀、鹿児島(奄美大島の学習室))において、化学実験付きの面接授業(スクーリング)を行い、実験の所要時間、実験の難易度、学生の反応等を測定・観察し、実験教材の適否を検討した。 3.公開講演会冨山房インターナショナル・日本学術会議主催のサイエンスカフェ、放送大学新潟学習センターの公開講演会および鹿児島学習センター主催の公開講演会(奄美大島学習室)においてマイクロスケール化学のデモンストレーション実験付き講演を行い、マイクロスケール化学実験の重要性、楽しさ、面白さを一般市民に紹介した。
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