研究概要 |
近畿大学原子力研究所では,教育研究用原子炉を用いて大学生のための実験や実習が行われている.これをインターネットを介して遠隔の教室で実施するシステムを整備して,原子炉遠隔実習を実践する.昨年度に引き続き,教材の作成と教育実践を行う計画であった。 教材作成とは,原子炉施設で行う各種の実験に遠隔の教室からでも参加できるようにするために必要な機器やソフトウェアを作成することである.今年度は原子炉内の放射線を測定する遠隔実験に取り組んだ.原子炉内の中性子数の空間分布を遠隔から測定する実験である.小型の中性子検出器を炉内で上下に移動させて,中性子数の垂直方向の分布を測定した.測定法がシンプルで理解しやすく,10分程度の短時間で測定結果が得られるため遠隔実験の課題として適している.詳細は近畿大学原子炉等利用共同研究経過報告書(平成23年度)で報告する予定である. 遠隔実習の実践に関しては,計画どおりには捗らなかった.原子力人材育成プログラムなど大学生を対象にして近畿大学原子力研究所で毎年行われている原子炉実習が,福島第一原子力発電所の事故の影響により例年の規模では開催されなかった.また,学生および一般社会人の関心が,現状では原子炉のしくみを知るよりは,放射線の知識と人体への影響について知ることに集まっている。放射線についての実験や実習の課題をこの遠隔実習の内容に加える必要がある.このように,今後日本における原子力発電の必要性についての議論が進み,日本のエネルギー源としての原子力発電の位置づけが定まってくれば,この遠隔実習の内容も社会のニーズに対応していくことが大切である.
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