小中学校において校内で実践できる地学教育プログラムを開発するべく、千葉県内および県外の学校で使用されている石材調査およびその周辺の地域地質と密接に関連している産業について調査した。 千葉県内では君津市の山間部に位置する小学校で石材調査を行い、駐車場の敷石に同市海岸部に位置する新日鉄君津製鉄所で不純物としてできたスラグが使われていることが明らかになった。そのため、新日鉄君津製鉄所にてスラグ生成の現場を調査し、授業で活かせる資料を収集した。さらに、千葉県南部の房総丘陵に分布する火山ガラス質凝灰岩(房州砂)を研磨剤の原料として採掘していた跡地を調査し、その位置や内部構造など基礎資料を得ることができた。これによって、房総丘陵における地域地質や地域産業がどのように地元の人々の生活に密着しているのかが明らかになり始めた。 また、他県の学校で使用する石材の事例調査として、北海道地域を調査した。ここには安山岩などの第四紀火山岩、黒曜石、カンラン岩、変成岩、中生代の堆積物、石炭など、千葉県にはあまり分布しない岩石が数多く露出する。各代表的な岩石が露出する地域に位置する小中学校を調査した結果、校庭の敷石、石碑、アスファルトに混ぜる岩石などで地域の岩石が利用されていることが明らかになった。さらに、石炭分布地域の夕張ではズリ山が自然発火してできた「赤ズリ」が道路などの建造物に、カンラン岩が分布する幌満地域では昆布干し場の敷石に「オリビン」という名でカンラン岩が使われている等、地元の産業と密接に関係していることが明らかになった。また、昆布干し場の敷石には「オリビン」の他に2種類あり、それぞれの特徴などを地元の漁師から聞き取り調査を行い、非常に有意義な情報を得ることができた。 この1年間で、地学教育プログラムを開発するための導入に必要な教材を入手できたので、今後の実践に生かしていきたい。
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