本研究は、日本と韓国のNGO関係者や研究者が、日本と韓国の各地の干潟に集い、底生生物・水鳥・干潟文化に関する調査活動を展開すると同時に、調査に参加する地元住民に対して調査方法の詳細を現地でレクチャーすることで、次世代の市民科学者の育成に努めることを目的とする。 本年度は、2011年6月10日~12日に、諌早湾潮受け堤防内側・外側海域における採泥・採水調査を地元NPOのメンバーとともに実施した。諫早湾干拓では、遅くても2013年までに5年間の開門調査を実施することが確定的となっており、海水導入前の貴重なデータを収集することができた。一方、本年度は10月まで科研費の70%使用制限が課せられていたため、夏の韓国市民調査に本研究費を使用することができなかった。干潟調査は時期が限定されるため、計画途中での科研費使用制限は、大きな障害となる。 その分、今年度はこれまでの過去15年間の調査データを集計し、学会・シンポジウムでの発表と論文投稿に努めた。諌早市・佐賀大学・福岡市で開催された公開シンポジウムでは、有明海と韓国の干拓堤防建設に伴う底生動物群集の変化を比較し、多くの共通点があることを紹介した。また、岩波科学や遺伝などの商業誌において、諌早湾の開門後に見られるであろう環境・生態系変化を、過去に見られた韓国の事例を基に詳細に予測した。 さらに、今年度は東日本大震災後の底生動物相の回復過程についての調査を開始した。これらの問題についても、今後は市民調査の一環として実施して行きたい。
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