研究概要 |
文化の多様性と自然科学の普遍性の関係を理解することは,文科系学生の科学リテラシーとして,また理科系学生の社会リテラシーとしても,不可欠なものである.科学の適用限界を理解し,社会の価値判断との関係の中で科学技術を適切に活用する能力の重要性は,平成23年3月11日に生じた大震災とその後の福島を中心とした混乱から,もはや説明を要しないであろう.日本において,この方面の議論が諸外国との比較で遅れてきたことが,事前・事後の対応の遅延につながっていることは明らかと思われる. さて,平成22年度は,東北大学において研究代表者及び分担者が共同で構築してきた「自然科学総合実験」のテーマ「弦の振動と音楽」を,文化の多様性と科学の普遍性・適用限界を学ぶに際して,より適した素材にするため改良を進めると共に,東北大学における初年次の転換教育科目「基礎ゼミ」において,法律実務家とともに,「法と科学の接点:科学を通して法を,法を通して科学を考える」と題する学際的なテーマでの授業実践を行った.この授業では,法廷における科学的議論の現状と課題を,学生たちに議論させることによって,専門家ではない市民が身につけるべき科学リテラシーのあり方,科学の専門家になるものが身につけるべき社会リテラシーのあり方を議論することが出来た.その内容は,東北大学全学教育の教員研修(FD)で発表するとともに,大学の紀要に掲載することによって,これに続く授業の資料として残すことが出来た.
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