初等教育で正しい生命観を育成するためには、動物の飼育を通じて生への営みを知ることで生命尊重の態度を養うとともに、動物の体がどのように機能するか学習することによって、子どもが生物の姿を正しく理解することが重要である。本研究は、このための教材生物として、解剖することなく体内の構造が肉眼でも見える小動物のアルビノ個体の活用法を開発し、教育現場での利用価値を評価して発信しようとするものである。教材生物としては、身近なもので教室内飼育が容易である動物として、メダカ、ドジョウ、およびアメリカザリガニを選定した。昨年度の研究により、小中学校で透明鱗メダカとヒドジョウを用いた観察ガイドを作成したことから、本年度はこれらを小学校の授業で用い、児童にアンケート調査を行うことで教材生物としての有用性について検討した。そして、教材生物としての普及を目指すために、特にヒドジョウとアメリカザリガニのアルビノ個体の繁殖に関する研究を進めた。また、学習の体内構造を示すための立体模型の開発を進めた。これらの成果の一部を全米理科教師協会(NSTA)で発表し、外国の理科教育者からの意見を聞くとともに、米国におけるアルビノ個体の活用の実態について探った。その結果、ヒドジョウは学習の中での位置づけや児童の関心高さから、教材生物としての価値が高いことが明らかになった。小中学校でも実施可能なヒドジョウの繁殖に関しては未だ成功していないものの、他の2種については安定して繁殖させて提供が可能となった。また、身近な材料を使ったザリガニの立体模型の開発はNSTAの発表でも注目され、日本におけるアメリカザリガニの教材化に関する研究を示すことができた。
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