研究概要 |
本研究は,生徒の物理概念に対する誤概念を把握し,(1)IT機器を効果的に活用して正しい概念に導く実験方法や(2)コンテクストを基盤とした探究学習の指導方法について,地域の高校教員と大学教員が共同で研究会を通じて実践的に検討し,その成果を高校や大学の初年次教育での実践を通して新しい授業プランを開発することを目的としている。本年度は,(1)代表的な手法として米国物理教育研究の成果のひとつ「Interactive Lecture & Demonstrations (ILDs)」の力学分野を取り上げ,その日本での適用の可能性について実践的に検討した。具体的には,その展開を研究会で具体的かつ実践的に検討した後,09年8月に京都府内の高校生22名を募って2日間の公開講座を開催し,その前後における高校生の力学概念の変化について調査を行った。ここで,力学概念の変化を調べる方法としては,上記PERの成果であるFMCE(力と運動の概念評価)テストを用いた。 公開講座から得られた知見は以下の4点である。(1)どの講義においても生徒が積極的に講義に参加し,討論を通じて正解の予想に近づく。生徒の感想の中で「この公開講座はとても頭を使って考えさせられた」という反応が多かった。(2)FMCEテストによる評価は,2日間参加者が11名と少ないため参考程度のデータであるが,どの分野でも大きく理解度が伸びていることを示した。(3)生徒の発言を促進する教師の助言については,公開講座の記録を基に検討中であるが,データの解析を生徒に行わせる,生徒が体験する日常の現象に関連づけるなど,いくつかの要素が明確になっている。(4)探究実験は内容理解と動機づけに大きく寄与をした。 今後は,高校で始めて物理を学ぶ生徒の授業へのILDs適用の可能性を探る必要がある。
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