研究概要 |
本研究は,学習者の物理概念に対する誤概念を把握し,正しい概念に導く実験方法や指導方法について,地域の高校教員と大学教員が共同で研究会を通じて実践的に検討し,その成果を高校や大学の初年次教育での実践を通して新しい授業プランを開発することを目的としている。本年度は,昨年度に引き続き、米国物理教育研究(PER)の成果であるアクティブ・ラーニングのひとつ「Interactive Lecture & Demonstrations (ILDs)」の力学分野を日本の高校・大学の授業で活用した「授業(単元)プラン」を開発し、実践的検討を行った。具体的な内容と成果は次のとおりである。(1)研究会の構成員である京都の高校教員(4校、6教員)および大学教員(1大学、1教員)の「物理」授業および大学初年次物理実験で開発したプランを実践し,その結果を分析,検討した。特に、昨年度に明らかになった課題を踏まえ、概念の定着度の向上をはかるホームワークを作成し、各高校で提出を課した。評価はFMCE(力と運動の概念評価)テストを用いて、一連の授業(力学の単元)の前後における生徒・学生の力学概念の変化について調査を行った。その結果、単に授業にILDsを導入しただけでは、概念の大幅な改善および定着を期待することは難しいものの、ホームワークやレポートなどにより概念を学習者自らが振り返る活動を課すことによって、定着度が増加することが明らかになった。特に、レポート作成は定着度に大きく寄与することが示唆された。(2)本研究成果の総括と外部発信を兼ねて、同じくPERの日本への導入を検討している研究者を招いた公開のミニシンポジウムを開き、日本におけるアクティブ・ラーニングの実践的活用方法について、参加者を交えた討論を行った。その結果、日本における効果とこの視点における授業方法の重要性が確認されるとともに、一般への普及には学習者をいかに活発に討論に導くか、指導者の指導技術の向上が必須であることが共通認識された。
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