平成24年度の教育実践の検証に基づき、オンライン教材の追加作成や指導法の改善を行った。 オンライン教材としては、3元不定連立1次方程式について、方程式系の方程式1つずつに対応する平面を選択的に空間内に表示し、交わりの集合を図とパラメータ表示で示して、解の意味やパラメータ表示及びパラメータの個数の意味を理解させる教材や、2次行列の成分を自由に設定できる1次変換に対してxy平面内をマウスで自由に動かせるベクトルとその1次変換による像を表示させて固有ベクトルの幾何学的な意味を理解させる教材を追加作成した。 指導内容の見直しとしては、線形代数における「次元」という概念を、日常的な「次元」のイメージをメタファーとして用いて、ベクトルを1本ずつ増やしていくときにそれらで生成される空間の「大きさ(=次元)」が膨らむかどうかが一次独立性に関係していることに着目させる指導を通して理解させるような指導案の作成などを行った。 一方、これらの教材や指導による理解には、学習者がある程度空間ベクトルに対する幾何的表象や空間の集合的記述に関する表象をもっていることが必要であると考えられる。この点について、これらの表象を測ったテスト結果を分析して検討した。その結果、一部の学習者について空間内の4本のベクトルの生成する空間と生成空間としての集合的記述に関する表象に問題があることが判明した。 学習者のもっているベクトルや集合に関する表象をさらに詳しく調査し、各学習段階における学習者の数学的表象の発達に合わせた指導方法や教材を検討することが今後の課題である。
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