幼稚園・保育所で自然保育が充実していくことを目的に、今年度は主に次のような研究を行った。 1. 自然にかかわる保育を実施する上で、現職保育者が困難を感じている課題(保育指導技術・知識が不十分、衛生面や木登りなどの安全性、花や実をちぎることへの抵抗、園環境が不十分など)を調べ、それへの対応を考えることで、幼稚園・保育所で自然に親しむ保育の取り組みを制限している問題の解決を試み、自然保育を一層進める一助とした。 2. 「生きものとの遭遇で命を感じたり、焼き芋後の灰を触って、手を伝ってくる熱さで温度を理解していく」などの保育事例、また、植物を豊かに取り入れた園環境、保育教材などの事例を収集し、自然に親しむ保育によって幼児がよりよく育つことを、整理・分析して示した。保育実践の提案には至らないが、自然保育の重要性を示す事例が認められた。 3. 非日常的な自然体験や宿泊体験の有効性を踏まえ、「幼児のための自然体験教室」を企画し実施した。さらに、保育所で実際に行われているお泊り保育の事例をビデオ撮影し、保護者アンケートや映像分析を行った。この結果、日常の保育活動との連続性を踏まえつつ、子どもが大自然とふれあう機会を提供することで、好奇心や探究心、感性の芽生えを育み、自立を大きく促すといった「成長の契機」となることが示され、宿泊型自然体験の意義と課題が明確になった。 4. 日本環境教育学会にて、「幼児の生きる力を育てる自然体験―保育現場における課題と対応について―」という自主シンポジウムを開催し、話題提供者や参加者との討論を通して、幼少期の自然体験や生活体験を制限している要因を探り、それを打開するための保育現場や保育者養成教育における課題について考えることができた。
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