本年度は、以下の2点を達成した。 1)学術的英文読解方略の改善 これまで開発してきた学術的英文読解方略に関して、より実践的な読解を可能にするために、昨年度に読解事例を作成した際に利用した10本の論文について、文中の重要単語を同定するとともに、それらが論文中のどの部分に頻出するのかを明らかにした。各論文に対して英語力の高い学生を複数人割り当て、独立して作業させた後、一致度を考慮しながら同定した。その結果、パラグラフ数が4程度以上の場合、第1セグメント(セグメントは、章・節・項で論文を分割したときの最小単位)の中に、重要単語のほとんどが含まれていることが明らかになった。つまり、前期の条件を満たす場合、論文の内容を把握しやすくするために、先行オーガナイザーとして第1セグメントを読むという方略を利用できると言える。 2)英文読解支援システムの改善 前年度に開発した、学術的英文読解方略のガイドラインと単語選別方略に基づく、英文読解支援システムの改善を行った。まず、skimmingやscanning方略に基づく英文の絞り込みと表示の方法を、各セグメントの見出しのみを表示するモードと、それに加えて第1・3パラグラフ、及び、中間パラグラフのtopic sentenceを表示するモードの2種類に増やした。また、単語選別方略に基づいて重要単語をハイライトして目立たせる際に用いるリストについて、教授者がサーバ上の設定画面から任意にJACET8000のレベルを指定できるようにした。これらの改善によって、より柔軟に学習活動を支援できるようになったと言える。
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