研究概要 |
本研究は,情報表現の方法が人間の情報判断にどのような影響を及ぼし判断を左右するかについて学習者のメタ認知を促すことにより,小学生から中高生までの幅広い学習者の情報判断力および情報表現力を高めることを目的として,学習教材を開発しようとするものである。「メタ認知」は,端的に言えば「認知に対する認知」を意味する。情報判断について言えば,「なぜ人間は誤った判断をしてしまうのか」「判断の誤りにはどのような種類があるのか」「判断の誤りを防ぐには,どのような点に注意すればよいのか」といった知識に加えて,自分の情報判断に対するモニタリングやコントロール(制御)が,メタ認知に含まれる。こうしたメタ認知を育てることが,学習の転移を促進し,学んだ知識・スキルの活用を促すことが徐々に明らかになってきている。 本年度の研究は,昨年度の準備段階をふまえて行った。すなわち,昨年度は,日常的な素材である新聞,雑誌,広告,各種説明書,Webサイト等から,受け手が情報判断を誤りやすい情報表現の事例を100例程度収集し,収集した情報表現事例を申請者が分類してカテゴリー化を行い,カテゴリーごとに複数ずつ,発達段階を考慮しながら典型事例を選択した。こうした事例の選択に際しては,小学校,中学・高校の教師の意見を参考にした。これをもとに,本年度は,サンプリングした児童・生徒がそれらの情報表現からどのような判断を行うかを発話思考や筆記を通して調べ,課題の問題点を明らかにして,改訂や変更を繰り返し行った。最終的に,30個の課題に絞り込み,それぞれの解説を作成した。次に,これらの問題それぞれに対する解説を作成し,現在,教材の試作版を作成している。
|