研究概要 |
[研究内容] 本研究の目的は、英語のリーディングにおける教授法で同じトピックの読み物を継続的に読んでいく方法(Narrow Reading ; Krashen, 1981)が効果的であることを脳科学的に検証し、今後さらに新しい教授法開発へと発展させることである。そのため、21年度は、大石(2006)で分類した4つの脳活性型(無活性型、過剰活性型、選択的活性型、自動活性型)の学習者を対象に、一定期間トピックを限定してリーディング指導を行い、理解度チェックテスト、光トポグラフィを使用し、課題遂行時の脳血流増加量を測定し、アンケートとインタビューを実施した。 [意義・重要性] 平成22年度は、平成21年度の実験で得られたデータを分析する。1)学習者を初級、中級、上級に分け、10日間の読解トレーニング前後で習熟度別に学習者の理解度と脳活性度の変化を分析する。 本研究から予測される結果としては、Narrow Readingの教授法は、いずれの学習者においても効果的であることが脳科学からの知見が得られるであろう。具体的には、脳の活性型が無活性型および過剰活性型の学習者は、選択的活性型に変化し、選択的活性型は自動活性型に近づき最適な脳活性状態に変化すると予測される。自動活性型は有意差が認められるほど脳血流量の変化は見られないと予測されるが、理解度については向上し、明らかに容易に言語を処理することができるようになると判断できるであろう。読解過程中のストラテジーについては、上級学習者の方略として変化している可能性があることがインタビュー結果から判断できるであろう。本研究結果は、従来の認知学的知見からの第二言語習得論にもとづく教授法の一つであるNarrow Readingの効果が、脳科学的に実証できることが予測され、今後の効果的な教授法開発の可能性を明らかにできるであろう点で意義を持つ。
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