研究概要 |
本研究は,情報把握力,論理的思考力,分析力などの高次の能力を測ろうとする多肢選択式テストに関して,要求される認知スキルの構造を同定して,各受験者の解答データから認知スキルの修得状態に関する診断情報を引き出そうとするものである。テスト項目が測ろうとする認知スキルのうちどの部分が不足しているのかを,各受験者について分類できれば,多肢選択式テストの診断的な利用に繋がることが期待される。 今年度は,教科・科目フリー型の総合試験の試作問題(多肢選択式)の中から,平面上における方向把握を扱った問題に関して,これまでに得られた結果をまとめて第14回図学国際会議において発表した。能力・資質の習得度に関する自己評価データから因子分析で抽出した「数理的素養・図の取り扱い」「情報処理・機器操作」「芸術への関心」の資質因子が平面上における方向把握を扱った設問の正誤と関連があること,より複雑な条件を吟味する必要のある設問ではいくつかの因子得点と強い関連を持つ方略が認められること,などの分析結果を発表して,研究者との意見交換を行った。 さらに,方略の分類基準の頑健性や多様性を再吟味するためのデータとして,新たな被験者を対象に,平面上における方向把握に関する問題を解かせると共に,立体の切断形状の把握に関する問題も同時に解かせた。現在,これらの新たなデータについての分析を行っている。 また,被験者の認知スキルの修得状態を分類するために,ルールスペース法に関する文献を収集して,適用の可能性についての検討を行っている。
|