研究1では、まず、小学校高学年通常学級在籍児童における要約文の評価方法を検討し、説明文の文章構造理解を狙ったコンピュータソフト「こうぞうくん」を用いた指導を通して要約スキルがどのように向上するかを評価した。さらに、その評価の枠組みを利用して、小学校5年通常学級に在籍する学習困難児2名の個別指導において「こうぞうくん」を利用した指導を行い、文章構造理解における本ソフトの効果を検証した。音読も困難な児童であるが、積極的に文章を理解しようとする姿がみられ、子どもの主体性の向上に役立つ可能性が示唆された。さらに、通常学級での協同学習にも「こうぞうくん」を用いた結果、画面から文章を切り出す操作などを話し合う様子が観察された。 研究2では、まず、小学校中学年通常学級児童に対して「クローズ法」を用い、説明文読解における推論の評価方法を検討した。そしてその評価の枠組みを利用して、軽度知的障害生徒の個別指導におけるクローズ法の活用を検討した。聴覚障害児の文理解のアセスメントに用いられていた「クローズ法」を知的障害児に初めて応用したものであり、また、手軽に使えるテストのデータベースとしてコンピュータ化した「クローズ法」を試作したため今後も同様のニーズのある児童生徒に用いることができると予想される。 研究3では、ダウン症児5名に対し、文字片を配列して単語を構成するアナグラム課題や、初歩的な算数文章題についてアニメーションを利用して理解を促すコンピュータ教材を作成し、個別臨床において活用した。その結果、具体物利用の場合よりも子どもの行動がある程度制約されることにより、学習の本質に気づきやすくなったと考えられ、知的障害児の主体的活動を促すことがわかった。
|