いかにして学習困難児が主体的に学習に取組めるような教材が作れるか、また、協同学習が、学習困難児の教育にどのように役立つかについて、基礎的な資料収集、教材の作成と試行を行った。 研究1では、小学校1~3年生を対象に、通常学級在籍児童における数直線理解の発達に関する調査を「数直線上の数の見積り課題」を用いて行った。また、友人同士で話し合いながら、コンピュータ上での数直線を完成していく協同学習を行った。その結果、正しく見積りができるのは小学校2年末になってからであり、典型発達児でも教科書の数直線が充分理解・活用できていないことがわかった。そして、「数直線作成機」というコンピュータ教材を作成し、通常学級での調査結果から推察される数直線理解発達の順序性を踏まえて、2名の学習困難児を対象にコンピュータ教材による指導を行ったところ、2とび、5とび、10とびといった目盛作成の学習に効果があり、重さの秤読み課題や公倍数の学習などに応用できた。 研究2では、昨年度開発した、文章構造の理解を促すコンピュータ教材「こうぞうくん」に、絵や写真の参照が可能になるように機能を付加し、知的発達に軽度の遅れのある特別支援学校高等部生徒2名を対象に本教材を活用した指導を行った。その結果、小学校3年生程度の説明文で構造の理解を誤っていた対象生徒が指導者とのやり取りを通して、文章構造図を書くことができるようになった。 研究3では、小学校5年生の学習困難児を対象に、漢字を部品に分け、その部品を語呂合わせ風に言語で説明する教材をコンピュータ上で作成し、指導を行ったところ、非常に意欲的に取組めるようになり、書字テスト得点も向上した。さらに、部品を組み合せて作文を組み立てるコンピュータ教材を作成し、本対象児に試行した。
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