いかにして主体的に学習に取り組めるような教材が作れるか、また、協同学習が、学習困難児の教育にどう役立つかについて、教材の作成や試行を行なった。 研究1では、前年度、映像教材を利用して国語学習を行なった自閉傾向のある小学6年生男児1名に対し、引き続き国語算数の映像教材を作成して個別指導した。指導のビデオ記録を分析した結果、指導者は、画面の動きを言語化してイメージを膨らませる支援を多く行なっていた。対象児は基礎的な文章題において、指導前は問題文に含まれる数値を用いて機械的に計算をしていたが、指導後はペーパーテストにおいても、簡単な図を利用して正しい立式をすることができるようになった。映像教材における物の動きが念頭でイメージできるようになったためと考えられる。 研究2では、前年度からの研究の継続で、動作語に関する映像教材を用いた小集団の協同学習を行なった。映像からわかることを発表し合うディスカッションの結果、一人ひとりは未熟な表現でも、教師の支援により互いに練り上げられ、動作語の真の意味に近づいていくことがわかった。 研究3では、1年間、PC・実物投影機・プロジェクターのセットを使い授業を展開してきた小学校3クラスを対象に、「学習困難児への配慮がそのまま他の児童にも役立つ」という「学習のユニバーサルデザイン」の視点からのICT活用研究を行なった。年度末に担任教師3名と研究代表者による報告会を行ない、その発話分析を行なった結果、教材や機材の操作に関する言及は単独ではなく、教育目標や教育内容に関することと組み合わせて行なわれていることがわかった。また、特別なニーズのある児童の在籍するクラスの担任は、児童の学習に関することへの言及が他のクラスよりも多く見られた。したがってICT活用に関する教員研修の中で、学習のユニバーサルデザインの視点の研修も可能であることが認められた。
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