研究概要 |
研究最終年度である平成23年度は,これまでの実績を踏まえ,遠隔学習コースの設計方法論のとりまとめを行なった。全体のまとめは次の通りである。 研究a.現職教師の「働く場」での教育改善を可能にするコンテンツの構成:研修全体を貫く枠組みを抽象的・一般的な枠組みとして提供する「理論の提供」,提供した理論を特殊化した研究事例の課題を,学習者・調査対象者として体験する「研究事例による参加体験型の経験」,具体化・特殊化されたサンプルとしての実践例を提供する「実践事例群の提供」,提供した事例群から研修課題を帰納的に導出する「一般化した課題の提供と定式化」の4つのサブコンテンツに区分し,このシーケンスでコースを構成することが有効であると考えられる。 研究b.インタラクションに伴う存在感の形成・変動過程の分析と記述:運勢ライン法による調査から,共同体意識が向上することにより,研修への参加意欲も向上することが示されている。コースの中で受講生各自が実践前に意見交換を行う授業検討会を組み込むことで,個々の実践における理論の位置づけに関する理解が深まるとともに,受講生相互の存在感が向上するものと考えられる。 研究c.インタラクションの活性化方略を中心概念とした遠隔学習コースの設計方法論:遠隔研修コースの実践に基づく研究a・bの分析によると,現職教師向けの遠隔学習コースにおけるインタラクションの考え方は,学習初期には「インストラクタとのインタラクション」,学習初期から中期には「インストラクタ・コンテンツとのインタラクション」による実践の計画立案,存在感が向上する学習中期から後期には「他の学習者とのインタラクション」により,多くの視点を得て実践を共有することが効果的であることが示された。このようなインタラクションの考え方は,集合研修でも有効であると考えられる。
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