本研究では、授業分析において、分析者が授業逐語記録を読む際に、何をどのように意味付けているかを確定するために、授業分析に特化した"制限された言語"として、中間記述言語を開発している。 2年次にあたる平成22年度は、前年度からの継続として中間記述言語を処理するためのアルゴリズムの開発を進めた。事例分析では、問題解決学習における討論場面の逐語記録を中間記述言語に変換した。そして、各発言の特徴や、発言間の関連性を、中間記述言語の記号形式を手がかりに明らかにした。その結果、分析対象授業に特有の特徴として、1)子どもたちの経験的事実が、授業場面で多数出されるようになっていく過程、2)児童発言間にみられる経験的事実の内容的な近接性、3)他者の発言による経験的事実の掘り起こし、の3点が明らかになった。また、中間記述言語を用いた授業分析の特性として、1)解釈の明示性、2)発言間の関連の定量化の可能性、3)発言をもたらしている契機の探索可能性が明らかになった。さらに、分析対象とした授業の特徴を、中間記述言語からソフトウェアが判別できるようなルールを明らかにした。そして、パソコン上で稼働するように、テキスト検索における正規表現として表現した。これをテキスト処理のソフトウェアに組み込むことによって、中間記述言語における記号の形式によって、発言の論理構造を分析することができる。以上により、従来主として質的な分析として行われてきた逐語記録にもとづく授業分析に対して、定式的な分析手法を確立できる可能性が明らかになった。
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