研究概要 |
平成21年度に2人の学習者で仮想環境を共有する(同時にオブジェクトを操作)プロトタイプシステムが完成し,平成22年度ではこれを3人以上の学習者で共有できるように拡張した.平成23年度ではオブジェクト操作方法に工夫を加え,オブジェクトを同時に操作して学習するタイプと,交互に操作して学習するタイプと両方扱えるようにシステムを拡張しプロトタイプシステムを作成した.これにより,協調学習時におけるオブジェクト操作方法による学習プロセスの差や,学習者の役割の割り当てやその変化等を考察し,より適切な教授戦略を検討することが可能となった.具体的には,ボールのようなオブジェクトのキャッチボールを題材として検討し,投げる行為を行う学習者と,受ける行為を行う学習者とを想定した.2人の学習者はそれぞれ役割が異なり,また役割が入れ替わる事により,さまざまな学習プロセスが発生することを確認した.また評価実験の結果から以下の知見を得た. 1)2人の学習者がオブジェクトを同時に操作する方法:2人の場合,傍観者になる学習者が発生せず,体験を伴いながらの効率的な協調学習が発生する.議論(会話)が常に発生し学習活動が促進しやすい. 2)3人の学習者がオブジェクトを同時に操作する方法:3人の場合,リーダ役となる学習者が発生した場合,上記の1)と同様な状況が観察される.リーダー役となる学習者がいない場合,傍観者となる学習者が発生し,議論(会話)が発生しないケースもある.役割を与える工夫がシステムに必要となる. 3)複数の学習者がオブジェクトを交互に操作する方法:同時操作のシステムと比較し,投げる側,受ける側と役割が明確になり,議論(会話)が発生しやすくなる.また最初の役割を交代させることにより,さらに議論(会話)が発生しやすくなる傾向が見られた.
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