研究概要 |
平成23年度は,まず批判的思考尺度については,22年度に開発した4×4マトリックスによるメディアに対する批判的思考力尺度の信頼性を検証した。評価の異なる教師間の一致係数は内容:W=.82,方法W=.73であり,作成した尺度は一定の信頼性を有する。 メディア日記に基づくリフレクションをよりシャープなものにするため,メディア利用の目的を「仕事や学習のために必要な最新の情報を集めるため」に限定し,メディア特性(検索機能,速報性,簡便性,信頼性,嗜好性)からみて,どのメディア(Web、図書、テレビ、新聞、Twitter & Facebook)をどのような比重で用いるべきかの方針を立てさせ,自らのメディア行動と比較させるパッケージを開発した。メディア利用の方針を立てる場面では階層分析法を利用した。メディア行動の記録では,利用するメディアのタイプ,利用目的を簡便に記録し,利用の傾向を学習者自身が視覚的に把握でき,一定期間で振り返りを行えるようにした。大学生72名を対象とした授業で成果を確認した。結果として,メディア利用の方針を予め決定し,その方針と自らのメディア行動を比較・検討していること,事後において批判的思考力が高まることが示唆された。 以上から,本研究の成果を3点にまとめる。第一に批判的思考力の評価手法の開発である。開発した尺度は複数の評価者においても一致度が高く,学習者自身の自己評価や事前・事後での利用も可能である。 第二に,メディア認知の意識化手法の開発である。学習者個々のメディア行動を可視化する集計型メディア日記法と,メディア利用の方針を可視化する階層分析法を組み合わせることにより,リフレクションが促進され,批判的思考力が高まることが示唆された。 第三に,教材パッケージの開発と配布である。批判的思考尺度,集計型メディア日記,階層分析法によるメディア利用の方針の決定について,一部または全部を用いて学習できるパッケージを作成できた。
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