本研究の目的は、ICTを活用して授業を行っている教師の割合が低い(言い換えれば、日本の授業の中でICTが活用されていない)要因を分析することである。対象とする授業は、中学校第2学年の数学と理科の授業である。指導・学習活動におけるICTの利用に関する国際比較では、調査参加国・地域間で非常に大きな差(10%台から80%以上まで)が生じている。日本は、南アフリカに次いで低い値である(数学教師23%、理科教師44%)。 この理由をICT機器の整備状況の観点で分析を試みた。コンピュータ1台あたりの生徒数は、日本は、5(人/台)未満の学校が全体の約35%で、10(人/台)未満の学校は約70%、20(人/台)未満の学校はほぼ100%に近い。5(人/台)未満の比率に注目すると、日本は参加国・地域の中で好ましい状況といえる。インターネットに接続可能なコンピュータは、世界のほぼすべての学校で設置されている。日本を含む10の国・地域はインターネット接続可能である学校比率が100%である。プロジェクターを所有する学校は、日本では6台以上のプロジェクターを所有する学校が7%であり、日常的にプロジェクターを使用した授業ができない環境といえる。ICTを活用している教師の割合が高い国・地域は、学習管理システムの保有率が高い(シンガポール95%、香港91%、ノルウェー70%)、教師のメール・アカウントの保有率が高い(シンガポール100%、香港98%、ノルウェー89%)という特長が見られた。
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