本研究の目的は、ICTを活用して授業を行っている教師の割合が低い要因を多角的に分析することである。 今年度は、まず、SITES2006(第2回国際比較調査のモジュール3)の調査結果をもとに、ICTを活用している日本の中学校第2学年の数学教師に焦点を当て、どのような教育実践を行っているのかについて分析した。指導事例で多かったのは、図形に関するものと、関数・グラフに関するものであった。ICTを活用して授業を行っている教師の割合は、性別による差は見られなかったが、学歴による差が見られた。これは、SITES 2006の国際調査結果の報告と一致していた。 次に、学校におけるICT機器等の所有率を詳細に分析すると、日本は6台以上のプロジェクターを所有する学校が少なく、普通教室で行う授業ではプロジェクターの使用が困難な環境といえる。モバイル機器の所有率は、日本は国際平均に近い値である。日本の教師のメールアカウントの所有率は、国際平均より低い値である。 日本の数学・理科教師は、授業の中でICTを使用していない実態と、使用環境(ICT機器等の所有率)が国際的に見て悪い状況が明らかになった。 ICTのインフラ整備は、なお一層必要である。しかし、日本の教師のICT使用割合を高めるためには、教師の技術的かつ教育的なICT能力の開発(研修等)が必要であり、これが今後の課題といえる。
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