本年度は、最終年度であるので、執筆作業を中心に行いつつ、落ち穂拾い的に、資料収集を行い、かつ研究成果の発表も行った。史料調査としては、岡山県立記録資料館において、仁科芳雄の兄の残した書簡等の資料が存在することが判明したので、それを調査した。同時に生地である里庄町浜中の実地調査を行った。この実地調査は、仁科芳雄の幼少時の環境を明らかにすることの一環をなすもので、周辺が江戸時代から現在まで続く干拓事業によって拓かれた土地であることを実地で確認することを目的としたものである。学会発表としては、オハイオ州立大学において、東アジア科学史の国際学会がひられたので、その機会を利用し、本研究の成果を発表することにし、本研究のうち、とくに物理学の「研究」が戦前の日本で行われた背景についての研究発表を行った。出版物に関しては、前年度のマックスプランク科学史研究所における量子力学の歴史についての国際研究集会、HQ3において、本研究の一部を研究発表したが、その内容を論文化してプロシーディングに投稿したものがアクセプトされ、出版が決定した。これは本研究のうち、仁科芳雄の電気工学者としての出身と、彼の研究の関係を論じたもので、電気工学と物理学(フェリックス・クラインと仁科芳雄によるいわゆるクライン=仁科の式の導出等)のテクニカルな内容を含むので、そのような内容の論文を出版することが可能な、この国際学会のプロシーディングズに発表したものである。著書出版計画に関しては、原稿を初期の草稿の段階に達した。ただし、今後も、とくに出版計画が現実化するのに対応して、加筆推敲は継続して行う必要がある。 他方、企画書は完成し、出版計画を進めている。
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