研究課題/領域番号 |
21500979
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
大野 誠 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (60233227)
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キーワード | ニュートン / 『光学』 / 錬金術 |
研究概要 |
昨年度(平成23年度)の交付申請書に記載した研究の目標は、「ニュートン『光学』の刊行状況、特に刊行を強いた要因がなかったかを検討する」であり、研究実施計画は、(1)7月の化学史学会で「ニュートン『光学』の成立について」を発表し、『光学』の本論と錬金術の関係について検討結果を報告する、(2)秋以降に、目標に掲げた「刊行を強いた要因」の有無について書簡集、手稿史料で検討・分析する、であった。このうち(2)については、計画そのものを延期することにした。というのも、(1)の研究を進める過程で、『光学』の本論のなかにニュートンの錬金術研究と密接に関係する箇所を発見し、その全体像を浮かび上がらせることを優先すべきだと判断したからである。この箇所とは、色と粒子間距離の関係であった。『光学』に付録として一連の「疑問」が掲載され、その中で18世紀化学に多大な影響を及ぼした物質の階層構造論が提起されていることは、専門家によく知られているが、本論の中にニュートンの錬金術(化学)研究の成果が見られ、それが具体的には物質の色と粒子間距離(もしくは粒子の大きさ)の関係であることは、これまでに正面から論じられたことはない。この知見は、ニュートンがなぜ『光学』に錬金術研究の成果を示したか、あるいは光学と錬金術をつなぐ内的論理について重要な手掛かりを与えており、年度計画を変更しても本研究全体の前進にとって有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度後半に実施を予定していた研究計画を延期したため、そこだけをとらえれば、「やや遅れている」になるかもしれないが、これまでの研究では見落とされていたテーマを発見でき、それが本研究全体にとって有意義であるため、それで十分に埋め合わせできている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、昨年度後半に予定していた研究計画は延期したが、量終年度の本年度においてもそれには着手せず、それに代えてニュートンの錬金術(化学)実験ノートの検討に集中する。というのも、「ニュートン錬金術」研究にとって基礎となる錬金術実験ノートについて、これまでの研究も取り上げているが、その扱い方は「つまみ食い」の感があり、分析が体系的に行われているとは言い難いからである。
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