文献調査は電気工学者の文書調査と、周辺技術の調査を分けて行った。本年度は、前者として田中久重が明治6年から9年に残した『明治6年電信機製造帳』『明治7年諸日記』『明治8年電信寮註文記』『明治九年一月ヨリ日記』をデジタル化して影印を作成し、『電信機製造帳』について調査を行った。その他は次年度DB化し合わせて公表の予定である。周辺技術の調査においては、国会図書館や東京都公文書館において明治初期の手工業に関する調査を行い、購入した『日本全国商工人銘録明治25年版』『第二回内国勧業博覧会列品図録』などの調査と合わせて、東京、大阪、京都の電気関係業種についてその業態を把握した。上記二つの調査から得た知見を元に電気技術国産化における国内産業の役割の具体例を考察した。その内容は5月開催予定の電気学会研究会で報告する。 器物調査は、逓信総合博物館に於いて、大北電信関係の電信器械調査を行った。この事により大北電信関係資料が、KDDI小山史料館、長崎県引揚小屋、長崎市歴史民俗史料館以外に現存していることが確認され、かつて小山史料館の資料と一緒に保存されていたことが判明した。また東京電力(株)電気の史料館と国立科学博物館に現存する2台のブラッシュ型と呼ばれていたアーク灯を調査した。その結果、2台は異なる特許に基づいて製造され、それぞれ使用年代、制作年代や製造者が異なることが判明した。この詳細は国立科学博物館研究報告E類に「日本国内に.現存するブラッシュ式と呼ばれる2台のアーク灯について」として発表した。
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