これまで本地域ではパルサの表層付近は凍上性の良い物質では構成されていないと考えられていたが、ボーリング調査により、凍上性の良い物質からなるパルサも存在することが判った。従って活動層内部でも季節的に凍上融解沈下が生じているパルサも存在すること、即ち季節的に形態変化する可能性があるパルサの存在が明らかになった。 GPSによる測量結果によると、2009年から2011年にかけて、特に径10m程度以下の小規模のパルサの面積が60-80%と減少した。大型のパルサも、周辺から融解沈下して10-20%程度の面積が減少した。 パルサ中の永久凍土の発達状態をみるため地温観測を行ない、初めて8m以深の地温データが得られた。パルサBでの地温観測(2010-11年)の結果を、以前の地温(1989-90年)と比較すると、活動層厚が以前は1m程度であったのに対して、2010-11年では2mを超えるほどに増大していた。またパルサBとパルサDの地温の比較では、パルサBでは永久凍土の基底が約5mであるが、パルサDでは約7mであった。 これまでの大雪山の高山帯での気温観測記録を収集した。これらと高層気象データ、アメダスデータを合わせて解析を行なった。その結果、大雪山の高山帯では、気温は1984年以緩やかな上昇傾向にあるが、1989~90年頃に年平均気温のピークがあったことが判った。1989年は暖冬で、1990年は冬季も夏季も暖かく、融解期をとりあげると近年では、1990年の夏が最も温暖であったと考えられる。また最近では2010年の融解期も高温であったことが判明した。 2010年の融解期の地温は、大雪山の他の場所でも例年より高かった。本調査地でも例年よりも高かったものと考えられる。したがって、2010年、2011年のパルサの面積の減少は、2010年の融解期の高温の影響が大であったと考えられる。
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