火山災害はいつ生じるのか、現時点では予測不可能である。火山災害の程度を科学的に論じるためには、噴火前に十分な調査が行われていなくてはならず、これに適した研究地域は極めて少ないのが現状である。しかし、三宅島においては、町田(連携研究者)によって長年のモニタリングがおこなわれており、地下水水質の変化を時糸列で追う事ができる。同じくリモートセンシングによって得られる衛星画像も、過去から現在までさかのぼって解析が可能であるため、2000年三宅島噴火後に生じてきた地表現象と地下現象を関運付けて論じることが可能となる。そこで、本研究では衛星計側データを用い、三宅島の噴火後の地表に堆積した火山噴出物および火山噴出物表層部における植生性状、大気汚染物質濃度のモニタリングを行い、火山噴出物量の厚さを見積もることを目的とする。本研究では、地上測定による火山ガスおよびキセノンフラッシュランプによる可搬型光源と紫外望遠鏡を利用したDOASによる火山ガスの測定を行い、衛星計測データから火山ガスの地上測定点周辺における植生指標(NDVI)を算出して、植生の生態状況と火山ガス(SO_2)との関連を調査した。解析対象地域は、三宅島東部の坪田高濃度地区、三宅島南西部の元阿古高濃度地区で2009年12月20日から12月23日までの期間に火山ガスの長期24時間連続観測を行った。火山ガスは12月20日13から12月22日24時まで継続的に坪田高濃度地区で発生し、20ppbから920ppbと高濃度なSO_2が観測された。しかし、元阿古高濃度地区では季節風の影響により火山ガス濃度が計測されなかった。また、現地調査と衛星計測データより、火山ガスにより被害を受けた植生が回復している地域と植生が回復していない地域を把握した。
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