研究概要 |
2000年7月14日に三宅島雄山の噴火活動が活発になり、気象庁三宅島火山観測情報によると、火山ガス成分のひとつである二酸化硫黄(SO2)の放出量は、2000~2002年に4,000~80,000トン/日と極めて高いレベルにあった(気象庁2000,2002年)。今もなお500~1,500トン/日の多量の火山ガス(二酸化硫黄)の放出が継続しており(気象庁2011年)、火山ガスの放出は当分継続すると考えられる。現在、三宅島役場が全14箇所で火山性ガス濃度の定点測定を行っているが、必ずしもその周辺地域の濃度を代表するとは限らない。本研究では、比較的簡便な装置で長距離区間の火山性ガス(SO_2)の平均濃度をその場観測できる長光路差分吸収分光(Differential Optical Absorption Spectroscopy, DOAS)法による計測を2010年9月22~9月29日の期間に行った。キセノンフラッシュランプによる可搬型光源と紫外望遠鏡を利用したDOAS法により、SO_2の24時間連続観測が可能となる。また、風向きにより高濃度な火山ガスが発生する地域が異なるため、坪田高濃度地区および薄木・粟辺地区(旧阿古高濃度地区)の2箇所で、キセノンフラッシュ光源を利用したDOAS法により火山ガスの24時間同時連続観測を行った。坪田高濃度地区において地上から10-50mの低層大気中で水平に近い長光路(480m)における大気微量成分のSO_2濃度を測定した結果、DOAS法と地上測定によるSO_2濃度は類似した時系列変動が観測され、DOAS測定では最大1.15ppmのSO2濃度が観測された。この結果は、この定点観測データが数100もの範囲での地域代表性をもつことを示しており、西風が顕著な時に風下の地域である坪田高濃度地区で高濃度の火山性ガス(SO_2)が発生していることをDOAS観測により明らかにした。また、薄木・粟辺地区において長光路(1300m)における大気微量成分のSO_2濃度をDOAS測定した結果、定点測定では観測されていない0.08ppm以下の微量なSO_2濃度が観測された。さらに、現地調査とASTER/VNIRデータより、火山ガスにより被害を受けた植生が回復している地域と植生が回復していない地域を把握した。
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