研究概要 |
気象庁三宅島火山観測情報によると、火山ガス成分のひとつである二酸化硫黄(SO_2)の放出量は、今もなお500~1,500トン/日の多量のSO_2の放出が継続しており(気象庁2011年)、2010年2月1日から2011年1月31日の航空機の運行状況は31.5%と火山ガスの影響により航空機の運行に影響を及ぼしている(広報みやけ2010,2011)。現在、三宅島役場が全14箇所で火山性ガス濃度の定点測定を行っているが、必ずしもその周辺地域の濃度を代表するとは限らない。本研究では、火山噴出物表層部の実態を把握するために、三宅島東部の坪田高濃度地区、南西部の薄木・粟辺地区(旧阿古高濃度地区)で2010年9月22~9月29日、2011年10月6(木)~10月12日(水)にDOAS観測を行った。西風が顕著な時に坪田高濃度地区で高濃度のSO_2が観測されたが、坪田高濃度地区の光路長(480m)は雄山に対して同方向のため、SO_2の拡散状況を把握できない。そこで、2010年9月28日夕方以降に西風が顕著となり、坪田高濃度地区において高濃度のSO_2が地上局およびDOASにより観測されたため、薄木・粟辺地区でDOAS観測していた観測機材を坪田高濃度地区へ移動して、従来の雄山に対して同方向の光路長(480m)と雄山に対して鉛直方向の光路長(450m)はともに交差する形で設置した。従来の雄山山頂に対して同方向のDOAS法(以下;DOAS-2)と雄山山頂に対して鉛直方向のDOAS法(以下;DOAS-1)ともに地上局のSO_2濃度と類似した時系列変動が観測され、DOAS-1によるSO_2濃度はDOAS-2によるSO_2濃度よりも常に高い値を示しており、DOAS-1によるSO_2濃度は地上局のSO_2濃度よりも低い値を示しているものの、数100mの範囲でSO_2濃度が拡散している状況を把握した。さらに、高濃度地区における現地調査とASTER/VNIRデータより、火山ガスにより被害を受けた植生が回復している地域と植生が回復していない地域を把握した。
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