現地で2~3月の雨期に観測を行った。裸地(草地)での潜熱フラックスは52±62W/m^2で、顕熱・地中熱フラックスを上回った。頻発する降雨(スコール)とその間の強い日射で一日あたりの蒸発量は1.92mmと推定された。また、夜間の凝結量(結露)は最大で0.01mm/hで、水蒸気量が多くても気温の低下が弱いために、結露が少なかった。再生林の林床では、正味放射が6±10W/m^2、地中熱が0±9W/m^2であったことから、潜熱はその間であると推定された。これは裸地の十分の一のオーダーで、蒸発量も同等であることが推定された。また、林床の潜熱・蒸発量は乾期も雨期も大差はなかった。林床からの蒸発は年間を通してほとんど発生しないと考えられる。再生林のサップフローは1個体あたり5.9~56.1リットル、天然林は17.5~189.4リットルであった。同じ個体にデンドロバンドを設置して、日振幅を計測したところ、再生林では正午前に現れる周囲長のピークと午後から夕方の収縮、夕方以後の膨張といった日振幅は雨が降ると消失し、周囲長はなだらかに右肩上がり(膨張)傾向になった。天然林では周囲長のピークは正午前後、夜間は収縮傾向で、再生林と位相が異なるが、雨が降るとこうした日振幅は不鮮明であった。日の出後、葉面飽差の拡大とともに蒸散(吸水)が起こり、葉層部と地表部の水ポテンシャル勾配の解消のために、夕方から夜間にリチャージを行う。昼の降雨はサップフローを抑制したが、気孔が閉鎖している夜の雨に対して吸水が見られたのは、リチャージによるものと考えられる。
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