研究概要 |
本研究は日本アルプスの高山帯の景観(地形・植生)成立過程に関して,従来その影響が十分考察されてこなかった地すべり地形に着目し,地形学,第四紀学および植物生態・古生態学の視点で検討するものである.地すべりは,山岳氷河が解氷してから後に生じる主要な地形変化の一つとして海外では注目されているが,日本アルプスでは研究途上にある.本研究では研究代表者等のこれまでの成果をふまえつつ,最近数万年間の高山の景観発達史を新たな視点で解明する.具体的には,日本アルプスの高山帯における地すべり地形の分布を詳細に解明し,適切な地すべり地形の事例を選び,その発達史と景観の形成過程を子細に検討し,高山帯の景観形成に果たしてきた地すべりの役割を具体的かっ量的に評価する.平成21年度は以下の調査・研究を遂行し,成果を得た. (1)地すべり地形の分布調査:既存資料を参考に,日本アルプス北部(白馬岳・朝日岳周辺)を主対象に地すべり地形判読を新規に行った,またDEM陰影図解析も平行して進めた. (2)大縮尺地すべり地形学図および植生図の作成:(1)に基づき,研究サイトを絞り込んだうえで高精度・高分解の調査を行うために縮尺1万分の1程度の地すべり地形学図と植生図を作成した.作成には肉眼による空中写真判読を主体的な手法とした. (3)野外調査:等高線図,地形学図および植生図の確認や露頭における地質調査,簡易測量などのため現地調査を行った.これにより,新たな露頭記載や年代測定値を得た. (4)文献レビュー:日本・海外の双方について,高山帯の地すべり地形発達と景観形成との関係に言及した文献や報告書等を渉猟した.体系的整理と今後の展望については,とりめとめ中である. (5)成果発表: 日本地理学会や日本第四紀学会で成果を順次発表した.
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