研究概要 |
北海道積丹半島と青森県下北半島を調査地域とし,MIS 5e前後に形成された海成段丘面の分布を明らかにし,その高度・形状などをもとに,海岸部の隆起運動が活断層運動によってもたらされたことを検討した.海成段丘面の編年は,112~115kaに噴出・堆積したToya火山灰を用いて行った. 積丹半島西岸部では,MIS 5eに形成された海成段丘面が連続的に分布している.その旧汀線高度は,南東部の泊付近では30m未満であるが,北西部の神恵内村周辺では60m以上となる.また,約7kaに形成されたと推定される海成段丘面の高度も,4.5m(南東部)から北西に高度を上げ,神恵内村の北西においては8m以上となる.このような急激な汀線高度の変化は,西方海域の海底活断層の活動によってもたらされたと考えられる.以上の研究成果は,日本地震学会2009年度秋季大会において公表した. 下北半島においても,Toya火山灰に覆われるMIS 5eに形成された海成段丘面が広く分布している.半島東部では,これらの旧汀線高度は30~50m程度であるが,ここでは短波長の高度変化は認められない.しかし,半島東部南部の東岸では,陸側のMIS 5eの海成段丘面はほぼ水平に分布するのに対し,海側では2度程度の傾斜で東へ傾斜することが確認された.急斜部の幅は約1kmである.程度の撓曲変形が認められる.このような変形は,規模の大きな逆断層の活動によって,海成段丘面が撓曲していることを示している.MIS 5eの海成段丘面の変形をより詳細に示すために,1970年代に撮影された空中写真を用いた写真測量を実施し,5mメッシュのDEMを作成した.このDEMに基づく地形解析結果は,2010年5月の地球惑星科学関連学会2010年連合大会において発表する.
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