本研究は、活断層の活動史を、活動区間とその活動特性に注目して取り扱おうとする試みであり、そのための有用な基礎資科を入手し得る可能性を持つヨルダン渓谷地域が当面の研究対象となっている。初年度にあたる21年度は、本研究の成果を左右する活動履歴や変位速度、最新変位量の場所的違いを明確にするための基礎資料を整える一年と位置づけ、以下の調査研究を実施した。 1)空中写真判読による詳細活断層図の作成 未収の空中写真・地形図の入手に努めた結果、この初年度でヨルダン渓谷のほぼ全域をカバーする写真・地形図をそろえることができた。それらを用いて地形判読を試み、ヨルダン渓谷北半部地域の詳細活断層図を1/2.5万地形図を基図にして作成した。この作業を通して、本地域の主要地形面の種類とそれらの分布が明らかとなり、また、断層変位地形判読により本地域の主なる活断層・Jordan Valley断層帯(JVF)の分布位置・変位様式・変位量に関する詳しい資料が得られた。 2)現地における地形地質調査 1)の結果を現地に照らして点検し、併せて関連する地形地質学的資料を収集するために、ヨルダン天然資源庁と合同で現地調査を実施した。その結果、写真判読による知見の多くに関し地形地質学的確証が得られ、JVFとそれによる地形変位の実態が明確となって、次年度の主課題・本断層帯北半部の活動履歴調査へと進む準備が整った。すなわち、この現地調査の結果をも踏まえて次年度実施予定のトレンチ調査地をHarrawiyya地区の2ヶ所に絞り込むことができた。 3)関連資料の整理・分析 日本の長大横ずれ断層についても、いずれヨルダン渓谷地城の研究結果との比較対象として重要になるので、本研究の目的に沿って関係する既存資料の見直し・再検討を始めることとした。本年度成果発表としてあげたものの一つはこの側面の成果にあたる。
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