研究概要 |
平成22年度は,京都盆地における名水の把握と水質調査,土地利用図の作成を主に実施した。また,平成21年度に見出した「都名水見競相撲」(1802)資料から,その番付け表に記述された左右の名水分布図を作成し,江戸時代の人々の名水に対する嗜好について検討した。その結果,本資料に記述された左右の地域区分は,『洛中洛外図屏風』に一致することが分かり,当時の人々かその視点で京都盆地を地域区分していたことが判明した。また,逆に言えば,洛中洛外図屏風の右隻,左隻の地域区分が都名水見競相撲により,詳細な地域区分線が引けることが分かった点は,非常に重要である。 地下水の点では,涵養域の推定を行うための方法の一つとして,降水の酸素・水素安定同位体比を測定し,盆地内の地下水の同位体比と比較する方法が有効的であり,その詳細な調査を実施した。2009年9月~2010年8月までの1年間,京都盆地から北部山地(貴船地域)の3地点に降水採取装置を設置して,2ヶ月毎に降水を採取し,その同位体比を測定した。降水の同位体比の結果から,本研究地域の降水の同位体高度効果は,δ180で-0.17%/100m(r2=0,981),δDで-0.7‰/100m(r2=0.819)であった。なお,地下水学会にて行った発表は,賞を受賞した。
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