地上設置携帯型散乱計の開発を行い、地表面からの散乱データを取得しPALSAR(衛星搭載SAR)データとの比較を行った。 PALSARと同じ周波数である1.27GHzを含む0.5-4GHzに感度のあるビバルディアンテナを4枚作成し、携帯型ベクトルネットワークアナライザと組み合わせて携帯型散乱計を作成した。さらに電波無響室でアンテナに対し0度、45度、90度傾けたワイヤを使って、フルポーラリメトリック校正を行い、開発したアンテナの持つ校正係数を見積もった。見積もられた校正係数を用いて、金属球や3面コーナー反射鏡で得られたデータを校正した結果、校正前後でクロストークが-11dBから-20dBに改善、位相差は±6度から±4度に改善、チャンネルインバランスが±0.6dBで変わらないことが分かった。PALSARではクロストークが-31dB以下、チャンネルインバランスが±0.02dB以下、位相差は±0.32°でこれらの値よりは悪くはなったが、開発したアンテナはフルポーラリメトリックレーダとして性能を十分持つことができることを確認した。さらにFriisの輸送方程式と金属球を用いて絶対値校正を行い、40%の誤差で絶対値が求められることを確認した。このアンテナゲインを用いてノイズ等価後方散乱係数を見積もったところ、2mの距離で-57.2dBであった。 また、本アンテナシステムをアラスカで行われたPALSAR観測とほぼ同期した実験を行い、ポーラリメトリックパラメータの一つであるアルファ角を求めた。地上設置型散乱計は13度、PALSARでは15度となり、よい一致が得られた。
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