地上から高度1-2kmまでの対流圏下部領域では、地表面とそれに接する大気との間にさまざまな相互作用が生じており、大気境界層と呼ばれる。この領域における大気は、気象現象を通じて人間の環境にもっとも強い影響を及ぼしている。とりわけ、都市大気においては、エアロゾルと呼ばれる固体・液体の微粒子や燃焼に由来する二酸化窒素など気体物質の濃度が高く、しばしば大気汚染の原因ともなっている。エアロゾルはまた、太陽光の散乱・吸収の直接効果と、雲の凝結核としての間接効果を通じて、地球温暖化にも関わる放射収支の評価において大きな不確定要因となっている。本研究では、光学的なリモートセンシング計測手法であるライダー計測手法、とくに通常のライダー計測では困難な地上付近の計測が可能になるイメージングライダーの手法と、人工光や太陽光を利用した長光路差分吸収分光法(DOAS法)を複合的に活用し、大気汚染気体からエアロゾル、そしてエアロゾルから雲粒への変化を動的に捉えることを目的とした研究を行っている。平成21年度においては、主としてDOAS法による二酸化窒素とエアロゾルの同時長期観測結果の解析を行うとともに、天空光観測による千葉都市エアロゾルの光学特性について解析・評価を進め、あわせて地表付近のライダー初期値データを求めるのに不可欠な前方散乱を利用した窒素ラマン信号の観測を行った。今後、こうしたデータを複合的に利用することにより、都市域のエアロゾルの動態解明につなげていく計画である。
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