研究課題
本研究では海水中の極微量のトリチウムを精度良く分析できるシステムを開発することを目的とする。トリチウムの測定にはヘリウム-3イングロウ法を用いる。これはトリチウムが放射壊変してできる娘核種のヘリウム-3を測定することで間接的にトリチウム濃度を分析する方法である。今年度実施した研究は以下の通りである。1.イングロウ法でトリチウムを分析するために海水を長期間保管する方法を検討した。溶存ガスの脱ガスについては改善したが、長期間の保管中にバルブから大気のヘリウムが漏れることが判明したため保管容器を改良した。キャリブレーション用海水と採取した海水試料を脱ガスした後密閉容器に保管した。2.東京大学大気海洋研究所運用の海洋調査船淡青丸を用いて鹿児島湾および東北沖太平洋でヘリウム同位体分析用に海水試料の採取を行なった。3.海水に溶存しているヘリウムの濃度および同位体の分析を行なった。今年度採取した上記試料の他に、2009年にインド洋において採取した海水のうち南極中層水が存在する海域の試料を中心に分析した。その結果、南太平洋と同様に南インド洋の中層にも最近まで表層にあったと思われる水の存在が確認できた。今年度は研究を行なっているキャンパスの移転に重なり分析装置の移設に手間取り、実施計画が予定通りには進まなかった。特にトリチウム濃度をヘリウム-3として分析する希ガス用質量分析計の立ち上げに半年以上かかった。さらに3月には大地震によりこの装置や海水試料の保管容器に大きな被害を受けた。
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