研究概要 |
本研究は有害化学物質であるホルムアルデヒドによる国内雨水汚染の実態を調査し,その汚染機構を明らかにすることを目的としている。平成21年度の研究成果を以下にまとめる。 (1)全国雨水汚染調査ネットワークの構築と汚染レベルの季節変化 調査ネットワーク地点:富山市,新発田市,金沢市,郡上市,知多市,世田谷区(東京都),青森市,札幌市,釧路市,福岡市,久留米市,宇都宮市,京都市 調査結果:釧路市以外のほとんどの地点で,年間を通して,水道水質基準値0.08ppmを超えるホルムアルデヒドが観察された。 (2)高度差による汚染実態の調査 富山県の富山市街(標高11m),立山山麓(標高1,180m),立山室堂平(標高2,450m)の3地点において,同日に雨水を採取して,ホルムアルデヒド濃度を測定した。その結果,標高が高いほどホルムアルデヒド濃度は減少の傾向が見られたが,その濃度はいずれも,0.08ppmを超えていた。ホルムアルデヒドによる雨汚染が高地にまで及んでいることが明らかになった。 (3)1降雨イベント進行中における濃度の変化 1降雨イベントについて1mmずつ降雨を採取し,ホルムアルデヒド及びそれ以外のアルデヒド類,無機イオン成分濃度を測定し,それらの濃度の変化と相関性を調べた。その結果,2mm以下の初期降雨ではアルデヒド類の中ではホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが主成分であるが,降雨の進行と共に,ホルムアルデヒドが主になった。ホルムアルデヒドの濃度は,人為汚染成分である硝酸イオンとよい相関が見られた。 次年度は降雨をもたらした気団の動きと汚染レベルの関係を調べ,汚染機構解明の手がかりをつかむことを計画している。
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