研究概要 |
1.調査結果とデータの解析 平成21年度からの雨水のアルデヒド類汚染の全国調査を継続した。3年間の結果を解析した。また,全国調査に加え,富山県富山市(中規模都市),岐阜県高山市(中規模都市),石川県輪島市(小規模港町)の3地点において,1降雨イベント間に雨量1mmずつを採取して,アルデヒド類の濃度変化を調べた。それらを解析した結果,以下のことが明らかとなった。 (1)全国調査において,調査地点,調査時期にかかわらず,アルデヒド類の濃度は雨量と以下の関係式で表されることが分かった。Cobs=m/v+Ceq (Cobs:測定濃度,m:降雨初期のアルデヒド類の沈積量,v:雨量,Ceq:バックグランド濃度) (2)地域別調査において,富山市と高山市においては雨の降り始め(初期降雨)に高濃度で,降雨の進行とともに濃度が減少し,やがてほぼ一定の濃度(Ceq=0.06ppm)に収束した。しかし,輪島市においては初期降雨の高濃度が観察されず,降雨の進行にかかわらずほぼ一定の濃度(Ceq)であった。 以上の結果より,日本における降雨汚染のバックグランドは約0.06ppmであり,特に初期降雨では0。25ppmにも達することが分かった。汚染機構は全国同様で,大気中の有機化学物質が光化学反応によってホルムアルデヒドに変換し,雨水に溶けるためと考えられる。人間活動の高い地域ほど初期降雨の汚染レベルが高いが,降雨の進行とともに地域差は観察されなくなる。 2.研究成果の公表と評価 国内学会において口頭及びポスターによって発表した。また,第4回国際水学会アジア地域会議(IWA-ASPIRE Conference and Exhibition)においてポスター発表し,Best Poster Awardを受賞した。また,3年間の研究成果をまとめて,国際誌Atmospheric Environmentに投稿し,受理後,現在印刷中である。
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