研究概要 |
23年度においては北海道大学オショロ丸に乗船、日本海表層海水の放射性核種(^<134>Cs,^<137>Cs,^<226>Ra,^<228>Ra,^<228>Th)の水平分布を調査した。ここで得られた分布より、溶存性の^<134>Cs,^<137>Cs,^<226>Ra,^<228>Raより海水循環の、非溶存性の^<228>Thより粒子の循環を議論した。特に^<228>Ra/^<226>Ra比の分布は、対馬沿岸分枝と沖合分枝の混合メカニズムに重要な知見をもたらした。ここで得られる情報は21年度、22年度の測定結果を合わせることにより、日本海の起源(対馬海峡を通過する表層海水における黒潮海水と東シナ海浅層海水の混合比)、および日本海に入った後の時間的(季節的)、空間的な海水循環パターンに関する情報を明らかにした。これらは日本海における汚染物質の循環を探る上で重要な指標となる。 また不幸にも23年3月の福島第一原子力発電所事故により莫大な放射性セシウムが放出された。大気中に放出された放射性セシウムは日本海、東シナ海、オホーツク海に供給された後、海水循環により海水とともに移動する。それゆえ優先的な記録・解析が必要とされる。23年度に日本海表層で測定がなされた^<134>Cs、^<137>Csの空間分布、およびその経時変動より、従来の測定では明らかにされなかった極低レベル放射性セシウムの汚染レベルが著しく低いこと、さらには本海域においては粒子として表層に供給後、半年以内に対馬暖流により津軽海峡、宗谷海峡から流出しているという循環メカニズムが明らかになった。この成果は国際誌(J. Environ. Radioactivity)に2本、既に公表済みである。
|