本年度実施した内容は以下の通りである。 1.南西諸島二地点のサンゴ年輪データの解析 すでに採取・分析が終了した、与那国島(北緯24度;1911年~2001年)及びトカラ列島宝島(北緯29度;1860年~2005年)の塊状造礁サンゴの骨格年輪の酸素同位体比と水温データを用いて、これらの海域の海水酸素同位体比を復元した。その結果、両海域を含む南西諸島域全体について、海水の同位体比、すなわち塩分の長期傾向は検知されなかった。 2.熱帯太平洋域10地点のサンゴ年輪データの解析 NOAA/NCDCのウェブサイトよりこれまで論文として公表されたサンゴ年輪の酸素同位体比分析結果及び水温データを用いて、太平洋熱帯域の海水同位体比、すなわち塩分の長期傾向を復元した。その結果、熱帯太平洋のうち、中央部は有意な塩分の低下が見られたのに対して、西部熱帯太平洋域は長期傾向が検出されなかった。この結果に、1.の南西諸島域における結果を組み合わせると、西部太平洋域については、亜熱帯~熱帯にわたり、海水淡水化傾向はみられず、熱帯太平洋域については、東部ほど淡水化傾向が顕箸になる、という概要(big picture)を得る事ができた。今後は、よりデータ数を増やし、本概要の信頼性を高めると同時に、データ質について引き続き厳密な評価を行う。 3.成果公表(論文)について (1)石垣島において1998年から2004年まで継続して採取した海水の塩分及び海水同位体比の結果について公表した。塩分と海水同位体比の関係の季節性等を論じた。 (2)南極海上の水蒸気の三種酸素同位体比の空間分布の結果について公表した。酸素17異常が海面相対湿度とよい関係にあることを示した。 (3)サロマ湖の湖水及び湖氷の同位体比の空間分布の結果について公表した。湖水の同位体比が結氷時の平衡同位体分別によって決定されている事をモデル計算により示した。 その他今年度は2編の論文と5報の学会口頭発表(うち、招待講演1)として成果を公表した。
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