熱帯・亜熱帯域に広く生育する塊状の造礁サンゴ骨格年輪を用いて、過去100年間の海洋淡水化傾向を復元した。サンゴ骨格の酸素同位体比は形成時の水温と海水の酸素同位体比の二成分で決定される性質を利用して、グリッド化された再解析水温データと先行研究レビューによって決定した水温変化に対する酸素同位体比の変化率(感度)を用いて、NOAAの古気候データアーカイブに登録された、これまでに得られたサンゴ年輪の酸素同位体比時系列データから水温寄与分を取り除き、海水の酸素同位体比の変化を求めた。海水の酸素同位体比は塩分とほぼ比例関係にあるが、海域による違いがあるため、海水酸素同位体比と塩分の空間分布を用いて海域毎に関係式を構築し、塩分へと変換した。結果として、西部太平洋域は熱帯~亜熱帯にかけて塩分の長期低下傾向は認められず、一方中央部から東部にかけて顕著な低下、すなわち表層海洋の淡水化傾向が認められた。以上の結果から、気候状態が近年徐々にエルニーニョ様へと変化しつつあることが示唆される。
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