研究概要 |
1. 生物試料の分析 本年度は沖縄県北部の瀬底島付近で採取したヒメジャコガイと別府湾で採取したオオツキガイモドキの分析を行った。いずれも軟体部を取り出し、ホモジナイザー処理後、凍結乾燥を行い、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)、及びCHNコーダーにより主成分元素から微量元素までの多元素分析を行った。ヒメジャコは貧栄養海域に生育するにもかかわらず、海水中微量元素濃度が比較的高かった泡瀬干潟に生育する他の二枚貝と比べ、V,Cr,Mn,Co,Ni,Zn,Cd,Pb,Uなどの多くの元素で2倍以上高い濃度を示し、これらの元素の生物濃縮係数は、Uを除くといずれも10の3剰以上で比較的高い値を示した。一方、メタンシープが存在する還元的特異海域に生育するオオツキガイモドキはCu,Pb,Cd,Biなどの親銅元素の濃度が高かった。 2. 海水試料の分析法の確立 キレート樹脂濃縮法を簡易簡便化し、多試料同時に濃縮を可能にするとともに、樹脂の種類や濃縮条件の検討を行うことで、回収率、濃縮率の向上と濃縮可能元素数の増加を試みた。簡便化については、キレート樹脂をこれまでのChelex100(BioLad)やEmporeディスク(3M)に加えてノビアス(日立)やMetaSep(GLサイエンス)についても検討した。これらの樹脂の濃縮条件の最適化を行うことにより、特にCaの除去率が向上し、Moなど陰イオン成分の回収率が向上した。特にノビアスでは、海水中のCaが効率良く除去できることから、濃縮率をこれまでの50倍から500倍に向上することができた。また、キレート樹脂通液の際に圧力がかからなくなったため、吸引装置と組み合わせて、多試料同時濃縮も可能になった。
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