研究概要 |
シャコガイとサンゴの褐虫藻の分析結果を瀬底島沿岸海水の溶存態元素濃度(一部、太平洋表層海水の文献値を使用)と比較し、生物濃縮係数を求めたところ、微量金属元素についていずれも類似した傾向を示した。特にZnとCdについては著しく高く、10^7レベルであった。他にPb,Mnは10^6レベル、Ni,Co,Cuは10^5レベルで比較的高い値を示した。Zn,Cdは海水中では極低レベルであるが、褐虫藻が高濃度に濃縮していることが明らかになった。褐虫藻の元素組成をRedfield比にあてはめて考察したところ、シャコガイ褐虫藻はC_<106>N_<19>Zn_<0.005>Mn_<0.002>Cu_<0.00015>Cd_<0.000035>Pb_<0.000006>,サンゴ褐虫藻はC_<106>N_<26>Zn_<0.005>Mn_<0.001>Cu_<0.0005>Cd_<0.00006>Pb_<0.000009>となり、主成分ではいずれも窒素のモル比が他の海域の植物プランクトンよりも高かったが、サンゴ褐虫藻はより高い値を示した。また、Cに対するZnのモル比はサンゴ、シャコガイともにほぼ等しかった。一方、還元的海底特異海域に生育し、化学合成細菌を共生する二枚貝であるツキガイモドキの軟体部を測定した結果、同海域から採取したアカガイなどの他の二枚貝と比べて、Pb,Cu,Biが著しく高濃度であったが、逆にZn,Cdは相対的に低濃度であり、サンゴ礁海域の他の二枚貝とは大きく異なる特徴であった。 サンゴ礁海域である瀬底島沿岸海域において海水中の微量金属元素を化学形態別にモニタリングを行った結果、酸可溶粒子態については、V,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Mo,Cd,Pb,Uの11元素、溶存態に関しては前述の元素からFeを除く10元素、イオン態についてはNiとCuの定量値を得ることができた。長期モニタリング結果では季節的な特徴は見られなかったが、10,1,6月にはFe,Ni,Cu,Zn,Cdが他の月に比べて特異的に高い値を示した。これらの元素はサンゴ粘液中に多く含まれていることから、サンゴ粘液が酸可溶粒子態元素濃度を上昇させた可能性が考えられる。さらに6時間ごとに採取した短期モニタリングの結果では、Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Cd,Pbが干潮時に高濃度を示すことから、前述の結果が支持された。
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