研究概要 |
衛星データプロダクトのセンサー間相対校正手法に関する理論的枠組み構築を目指す本研究は,4年計画の2年目(H22年度)として,当初の計画通り,波長応答関数の違いに起因するデータギャップの補正に関する基礎研究を中心課題に設定した.また,昨年度に引き続き,地上解像度の違いがもたらす領域平均値の不確定性についても合せて研究を進めた.まずは観測結果の観測波長帯依存性について,解析的手法による依存性の解明を試みた.具体的には,植生アイソライン方程式を用いて植生指数間関係式の導出を進め,植生キャノピー中の放射伝達モデルにもとづく数値実験を実施し導出結果の精度検証を行った.波長応答関数が異なるセンサー間の植生指数プロダクトを相対的に校正するためには,指数間の関係を近似することが必要となるが,これまでの研究では理論的根拠が示されないまま多項式が用いられていたうえ,これら多項式の係数がピクセル内(観測領域内)の植生変数(葉面積指数,緑被率,樹種等)に依存するという問題点が示されていた.本研究では,関係式を解析的に導出することで近似に適した関数形を明らかにし,係数が植生変数に依存することの理論的根拠を示した.さらに,数値実験により導出結果を検証したところ,係数の数が同じである場合,多項式による近似に比べ,導出された関数形を仮定した方が高い精度で近似できることが明らかとなった.解像度依存性に関する課題では,正規化植生指数の単調性に関する基礎理論に汎用性を持たせるため,有理多項式で表される植生指数の一般形に対しても適応可能な理論の展開を試みた.また,緑被率の解像度依存性についてもその発生メカニズムの解明を進めた.これらの成果は,センサー間の相対校正手法における理論的枠組み構築に必要な基礎理論として意義のあるものと考えられる.
|