衛星データプロダクトのセンサー間相対校正手法に関する理論的枠組みの構築を目的とし,頻繁に標準プロダクト化されている植生指数を中心に研究を進めた.まず,最初に地上解像度の違いがもたらす領域平均値の不確定性の発生メカニズムに関する調査,解析,および理論化を試みた.有理多項式で表現される植生指数の一般形を仮定し,その一般形で表現されるあらゆる植生指数の単調性を解析し,その増減に関する決定因子を明らかにした.増減決定因子の解析的表現を導出し,査読つき論文(2件)および国際会議論文(2件)として発表した.また,これらの理論を実テータ(AVNIR2)を用いて検証したところ,単調性に対してエンドメンバースペクトルが及ぼす影響のメカニズムが実証・検証できた. 次に,反射率間関係式にもとづく,波長応答関数の違いに起因するデータギャップの相対校正に関する研究を進めた.植生アイソライン方程式にもとづくVI間関係式の導出を進め,上述の植生指数一般形を仮定した場合の関係式について,査読つき論文(1件)として発表した.また,これと対をなす考えとして,土壌アイソライン方程式を利用した導出を試みた.後者の導出過程では,土壌アイソライン方程式の理論的根拠(妥当性)についても考察を加えている.また,導出の際に利用するアイソライン方程式の精度(高次項の影響)がVI間関係式の精度にどの程度影響するかを明らかにするため,放射伝達数値モデルを用いたシミュレーションを実行し高次項の影響評価を行った. さらに,幾何条件の違いに起因する相対校正上の問題点を明らかにするために,衛星天頂角および相対方位角の影響について研究を進めた.衛星天頂角が比較的小さい場合,VI間の関係式の本質的な特徴として,関係式中の係数は変化しにくいという性質があることを突き止めた.最後に,諸理論を統合し相対校正を行うための基礎理論について検討を行った.
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