研究概要 |
大気シミュレーション用の室内チャンバーを用いてベンゼン,トルエン,エチルベンゼン,m-キシレン,p-キシレン,1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼンなど芳香族炭化水素を、NOx存在下で光酸化し、生成する二次有機エアロゾルの粒子をエアロダインリサーチ社製の飛行時間型エアロゾル質量分析計で分析した。特に有機エアロゾルのエイジングの指標である,質量数44/全有機エアロゾル濃度の比(m44/OA比)に注目して測定を行った。得られたエアロゾルのm44/OA比は,照射時間とともにゆっくりと増加したが,約12時間の光照射によるm44/OA比の変化よりも,前駆体の違いによる変化の方が大きかった。m44/OA比は,前駆体のメチル置換基数が減少するほど増加し,メチル置換基が少ないトルエンやベンゼンから生じたエアロゾルのm44/OA比は,野外で観測される高度に酸化された有機エアロゾルと同程度であった。メチル置換基が少ない芳香族炭化水素の酸化で生じる環解裂型のカルボニルにはケトン型よりもアルデヒド型が多く,酸化が速いものと考えられる。揮発性有機物の室内実験で生成した二次有機エアロゾルは野外の有機エアロゾルほど酸化が進んでいない場合が多いが,前駆体を選べば実大気中の含酸素有機エアロゾルと同程度酸化したものが生成することが分かった。芳香族炭化水素のメチル置換基の数が、生成する二次有機エアロゾルの酸化をコントロールする因子であることを明らかにした。
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